研究内容について
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GIAの模式図
最終氷期最盛期(約2万年前)の北半球の氷床分布
地球の内部構造の模式図
【GIA(Glacial Isostatic Adjustment)とは】
GIAは、氷河期の間に大陸氷床の重みで押し下げられていた地殻が、氷床が融けた後に徐々に元の高さまで持ち上がる現象を指します。このプロセスは非常にゆっくりと進行します。
- 氷期に大陸に広がった巨大な氷床の重みで地殻が押し下げられた
- 氷床が溶け始めると、その重みから解放され地殻が持ち上がる
- この持ち上がりが数千年にわたり徐々に進行する
- 地殻の沈降と隆起が繰り返されるため、海岸線の変化にも影響
GIAは、地球の質量の再分布が原因で引き起こされる地球の形状の変化であり、測地学や地球物理学の分野で重要な概念となっています。GIAの影響を正確にモデル化することは、精密な測量や地球システムの理解に不可欠です。
【GIAの原因】 GIAは、氷河期と間氷期の氷床の分布の変化が主な原因です。氷河期には大規模な氷床が大陸上に広がり、その重みで地殻が押し下げられました。一方、間氷期にはこの氷床が融け、地殻の荷重が軽減されたことで、ゆっくりと元の高さに戻ろうとするisostatic rebound(荷重均衡回復運動)が生じます。
【GIAのプロセス】
- 氷床融解後、最大20,000年程度の時間スケールでGIAは進行
- 元の氷床荷重中心付近では地殻が最大数百mも上昇
- 一方、氷床から遠い領域では数十m下がる
- このアイソスタシー(平衡状態)への回復は地球内部の粘弾性的挙動に支配される
- さらに、海水の再分布による重力場の変化も影響
【GIAの影響】
- 沿岸部の海水準変化(相対的な海面上昇/低下)
- 広域的な鉛直地殻変動
- 潮汐現象の変化
- 地球の自転量や形状の変化(ごく小さいが重要)
- 地震やマグマ活動への影響も指摘される
【GIAの観測と応用】
- 精密な測地学的手法(GPS、絶対重力測定、衛星重力、潮位観測など)によりGIAの挙動を監視
- 地球物理学的モデリングと観測データの統合によりGIAのメカニズムを解明
- GIAの影響を考慮した高精度な測地座標系の構築
- 地球の粘弾性構造や氷床史の解明にも応用
このようにGIAは、地球の形状や運動、様々な地球物理過程に重要な影響を及ぼす現象であり、精密測地や地球システム科学の観点から重要な研究対象となっています。